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JaSMIn通信特別記事No.14

作成日:2018.01.11

ミトコンドリア病の診療について ~一小児科医の立場から~

地域医療機能推進機構 大阪病院 小児科

濱田 悠介

 

1.はじめに

 日本先天代謝異常学会患者登録委員会でミトコンドリア病を担当しております。今回の特別記事では、一小児科医としてミトコンドリア病の診療がどのように行われているのかを紹介させていただきたいと思います。ミトコンドリア病の疾患自体についての詳細はJaSMIn通信特別記事No.2(埼玉医科大学小児科/大竹明先生)、診療・研究基盤構築についてはNo.8(千葉こども病院/村山圭先生)の記事を併せてお読みください。

 

JaSMIn通信特別記事No.2 https://www.jasmin-mcbank.com/article/44/

JaSMIn通信特別記事No.8 https://www.jasmin-mcbank.com/article/78/

 

2.ミトコンドリア病とは

 ミトコンドリア病は原因遺伝子としては200以上の報告があり、共通点はあるものの、その症状も多彩で、さらに重症度も患者さまごとでさまざまです。遺伝子異常もミトコンドリア遺伝子と核遺伝子の異常によるものがあります。いずれにしても、ミトコンドリアのはたらきが悪くなってしまうことで症状がでるものをミトコンドリア病と考えればわかりやすいです。

 

 

3.診断

 まずはミトコンドリア病を疑うことが重要になります。症状が軽い場合はいくつかの臓器症状や家族歴などから疑います。近年は、呼吸鎖酵素活性やより感度の高い酸素消費速度による生化学的な診断の後に遺伝子検査を行い、診断を目指します。ただ、実際には遺伝学的診断に至らない場合もよく経験します。遺伝学的な診断技術の進歩により新たな疾患も年々増えています。特に新たな疾患を診断する場合には特に時間がかかることも多いので、主治医の先生にときどき問い合わせをしてもらうのも大事です。

 

4.治療と管理

 多くの患者さまは専門にされている先生が直接主治医であることはほとんどないのではないかと思います。専門家と呼ばれる先生は数名程度しか国内にはおりません。普段は地域の病院で担当の先生に診療にあたってもらい、ときどき、専門の先生に診てもらっているのではないでしょうか(もしかすると、専門の先生に診てもらっていない患者さまの方が多いかもしれません…)。

 新しい診療に関わる情報は、JaSMInを含めたネットワーク、患者会やフォーラムなどのイベントで集めて頂くことが大事だと思います。ミトコンドリア病だけではありませんが、主治医の先生に疾患の最新情報が自動的に流れていくようなシステムには残念ながらなっておらず、主治医の努力次第になっています。患者さまとそのご家族側からの情報提供が、主治医の先生に情報収集して頂く契機になればよいと思います。

 

5.新たな治療法の確立

 症状とその重さも患者さまごとに異なることが、治療法の開発においてその評価の困難さに結びついています。今のところは科学的に認められたミトコンドリア病の治療法はまだ少ないですが、たくさんの研究者や医師があきらめずに開発を行っています。これらの情報はJaSMInのようなネットワークを通じて集められることが多いですので、JaSMInのHPやメルマガなどを通じて更新情報をご覧いただければと思います。

 

6.患者会とのつながり

 私自身の向学のために、大阪で開催されたミトコンドリア病患者家族の会に参加させて頂いたのを契機に、さまざまな形でお付き合いさせて頂いています。患者会では、いろいろな患者さまの悩みを伺い、医師としてはできることが少ないことにいつも気づかされます。臨床医、研究者、製薬企業や患者さまに関わる方々たちがさまざまな形で結びついて、より良い方向に向かえばといつも考えております。

 

7.おわりに

 2017年はドラマで“Dr. X”が高視聴率で人気でした。私も一ファンとして毎週楽しみに見ていました。私も医師としては「失敗しないので」と言いたいところではありますが、実際にはなかなかむつかしく、小さなことにも試行錯誤の毎日です。希少で、診断も治療も困難な病気ではなかなかDr. Xのように独りではできないと思いますが、患者さまを中心として、様々な方々としっかり協力してオールジャパン体制で臨めば徐々に切り開くことができると信じています。

 

 

全文PDFは以下からダウンロードできます。

JaSMIn通信特別記事No.14 (濱田先生)