遺伝カウンセリングについて
東京慈恵会医科大学附属病院 遺伝診療部
原田 佳奈(認定遺伝カウンセラー)
はじめに
近年、遺伝医学や遺伝子解析技術は急速に進展し、多くの診療科において、私たちの遺伝情報を診断や治療に活かす医療が始まっています。こうした潮流を受け、遺伝カウンセリングの重要性も高まっています。
本稿では、遺伝カウンセリングについてお話いたします。
遺伝カウンセリングとは?
遺伝カウンセリングという用語は、米国の人類遺伝学者シェルドン C. リード氏が1947年に提唱した定義がはじまりだと言われています。日本では、米国に約30年遅れて遺伝カウンセリング(※当時は遺伝相談と呼ばれていました)が導入されました。
明文化された遺伝カウンセリングの定義は20以上ありますが、ここでは、文献やガイドラインで広く引用されている遺伝カウンセリングの定義1をご紹介します(図1)。
図1 遺伝カウンセリングの定義
つまり、遺伝カウンセリングでは、まず相談に来られた方の医学的状況や心理社会的状況を正確に把握し、疾患や検査、必要な社会資源などの情報をわかりやすく説明します。そのうえで、その方の価値観や人生設計に合わせた検査や治療の選択、あるいは「疾患とともに生きること」のサポートを行います。
遺伝カウンセリングの実際
遺伝カウンセリングでは、診療科にかかわらず、「遺伝」や「遺伝性疾患」に関連するさまざまな相談を受けています(図2)。遺伝カウンセリング担当者は、プライバシーに配慮し、安心してお気持ちを話していただける環境づくりに努めます。「こんな質問をしてもいいのだろうか」「(医療者に)正直な気持ちを話したら悪いのではないか」などと思わず、どんなことでもお話していただいてかまいません。
図2 遺伝カウンセリングの相談事例
遺伝カウンセリングはどこで受けられますか?2
全国遺伝子医療部門連絡会議ホームページで、遺伝カウンセリング体制が整備されている医療機関を検索することができます(2019年8月現在 124施設)3。このホームページに掲載されていない施設でも、遺伝カウンセリングに対応していることがあります。実際に遺伝カウンセリングを受診する際は、医療機関によって予約の方法や費用などが異なる場合があります。かかりつけの医療機関がある方は、まずそちらでご相談ください。
おわりに
遺伝医療が広く普及している今日において、誰もが遺伝情報を利用した医療や検査を受ける可能性があります。それは同時に、誰もが上記の相談例にあるような疑問や不安をもつ可能性があることを意味するとも言えるでしょう。こうしたひとりひとりの課題に対し、十分に納得した選択、最も後悔の少ないであろう選択をできるように、情報提供と心理社会的支援の両側面から個別に解決のお手伝いをします。
参考
全文PDFは以下からダウンロードできます。