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JaSMIn通信特別記事No.75

2023.06.08

小児慢性特定疾病と指定難病

 

国立成育医療研究センター総合診療部

窪田 満

 

 2015年1月1日に難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)1) と児童福祉法の一部を改正する法律2) が施行されました。小児慢性特定疾病に関しては厚労省局長通知3) も出され、公平かつ安定的な医療費助成の制度のもと、難病対策の充実がはかられました。先天代謝異常症はすべて小児慢性特定疾病になっていますが、3割ほどの疾病は指定難病には認定されていません。法令施行後8年たった2023年1月時点での対応表を別紙(画像PDF)に示します。これはあくまでも筆者の私見で作成したものであり、厚生労働省の正式な通知ではないことをお断りしておきますが、小児慢性特定疾病の中で、どんな病気が指定難病になっていて、どんな病気がなっていないかの参考にはなると思います。

 また、小児慢性特定疾病と指定難病の相違点と共通点を表1にまとめました。この二つの医療費助成事業は、根拠法や本来的な趣旨が大きく異なっていることに注目してください。

 

表1 小児慢性特定疾病と指定難病の相違点と共通点

 

 小児慢性特定疾病の根拠は児童福祉法であり、指定難病と異なり「希少性の要件」がありません。医療費助成の目的は、「子どもの健全な発育のため」、医療費の負担を減らし、本人や家族のサポートを行うためです。一方で、指定難病は「希少疾病」に対して医療費助成を行うことにより患者の協力を得て、症例のデータを蓄積し、治療研究に役立てることを目的としています。

 多くの先天代謝異常症がそうであるように、小児慢性特定疾病であり、かつ指定難病である疾病があります。こうした疾病については、20歳までは、指定難病ではなく小児慢性特定疾病の医療費助成が優先して適用されることとなっており、実際に自己負担額が指定難病の半額となります。20歳を過ぎれば、指定難病として申請し、重症度に応じてその助成を受けることになります。

 

 

 最後に、昨年から検討が始まった、新しい小児慢性特定疾病と指定難病の施策に関して簡単に述べたいと思います。

 

① 助成開始時期の前倒し

 現在は申請日からが医療費助成の対象となっていますが、それが、医療費助成が必要になった時点(重症化した時点や高額な医療になった時点)から医療費が助成されるようになります。

 

② 医療費助成に該当しない指定難病患者の登録

 目的は、治療研究の推進、および地域における各種支援を円滑に利用できるようにすることです。重症度分類にてらして医療費助成が受けられない患者を登録することで、悉皆性のあるデータベースに近づき、登録されたデータの研究利用に活用されます。また、地域における各種支援を受けやすくなります。なお、小児慢性特定疾病に関しては、すでに軽症者も登録されていると考えられます。

 

③ 登録者証(仮称)の発行

 指定難病は療養生活環境整備事業に、小児慢性特定疾病は小児慢性特定疾病児童等自立支援事業に位置付けられます。「登録者証」(難病分野)が発行されることにより、医師の診断書なしでも障害福祉サービスの受給申請時に活用可能となり、ハローワークや自律支援事業所等に対し、アクセスしやすくなります。

 

④ 難病・小慢データベースの法的根拠の新設

 データベースに関する様々な法的根拠を規定し、難病データベースと小慢データベースの連結解析や難病・小慢データベースと他の公的データベースとの連結解析を可能とします。ここにも、軽症者のデータ登録が悉皆性というところで大きな意味を持ちます。

 

⑤ 難病と小慢の地域協議会間の連携

 小児慢性特定疾病の地域協議会を法定化した上で、難病と小慢の地域協議会間の連携努力義務が新設されます。これによって、小児慢性特定疾病児童等の成人期に向けた支援が一層促進され、成人後の各種支援との連携が強化されます。

 

⑥ 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の見直し

 この自立支援事業は任意事業であり、実施率が低いことが課題となっています。そこで、この事業を努力義務化し、事業の実施および利用を促進させます。

 

 今年度中に上記①〜⑥が着手されることになっています。それらが実効性のあるものかどうか、きちんと見ていく必要があります。

 

【文献】

1) 難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)

2) 児童福祉法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第四十七号)

3) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長:児童福祉法の一部を改正する法律の公布について(通知).平成二十六年五月三十日(雇児発0530第9号)

 

全文(別紙を含む)のPDFは以下よりダウンロードできます。

JaSMIn通信特別記事No.75(窪田先生)