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大竹先生ラジオ出演、聴取報告(1回目放送)

作成日:2019.02.04

※以下の記事は、埼玉医科大学 小児科・難病センターの大竹明教授が出演されたラジオ日本「教えて!ラジオクリニック」の放送を聴取して、JaSMIn事務局が作成しました。

 

番組名:ラジオ日本「教えて!ラジオクリニック」
《パーソナリティ》さやま腎クリニック 池田直史 院長

出演:埼玉医科大学小児科・難病センター 大竹 明 教授

テーマ:「難病とは?難病の診断と治療のために」

放送日時:2018年12月14日12:15~12:30

 

 

 

池田先生(以下敬称略):こんにちは、池田直史(いけだ なおふみ)です。

 

大竹先生(以下敬称略):こんにちは、大竹明(おおたけ あきら)です。

 

池田:大竹先生はどのような分野がご専門でしょうか?

 

大竹:まず、私は小児科医です。その中でも先天代謝異常症という、生まれつきハンディを背負われてお生まれになった患者さんを対象にしたケアを中心に行っております。

 

池田:今週と来週は「難病とは?難病の診断と治療のために」というテーマでお話を伺います。ラジオをお聞きの皆さんも、難病という言葉を聞いたことのある方が多いと思います。まずは、どのような病気が難病と呼ばれるのかをお聞かせください。

 

大竹:はい。難病とは文字通り、難しい病気と書くわけですけれども、厚生労働省の定義としては、4つの条件がございます。まず1番目に、「どのようなメカニズムで発病するのかがよくわかっていない」こと。2番目に「治療の方法も確立していない」こと。この治療というのは、症状に応じて対応できるような治療、という意味ではなく、根本的な治療がない、そういう意味で治療法が確立されていない、という意味です。そして、3番目に「頻度が低い」こと。そして、最後4番目に「長期の療養を必要とする」こと。この4条件を満たす病気を難病といっております。

 

池田:相当な数の病名があると思いますが、全体の患者さんの数はわかっているのでしょうか?

 

大竹:難病は範囲がしっかり決まっておりませんので、難病がどのくらいかというのは一概には申せません。難病の中で、特に大事な病気、発症の診断基準が確定している病気のことを指定難病と申します。

 

池田:今、お話がありました、難病の中での指定難病といわれるものがあるわけですが、これはどんな病気を指すのでしょうか?

 

大竹:はい。難病のうち、頻度がより低く、客観的な診断基準が確定している病気を指定難病といいます。「頻度の低さ」を具体的に申しますと、人口の0.1%、つまり日本の人口を1億2千万人としますと、12万人以下、ということになります。また、「客観的な診断基準」は、各学会研究会が作成しております。特にこの2~3年、各学会研究会は病気の診断基準を作ろうと、奔走しております。希少度が高く、客観的な診断基準が確定している病気について、厚生科学審議会の意見を聞いて、厚生労働大臣が指定する疾病のことを指定難病といいます。ただし、指定難病という診断が正しくても、重症度の基準を満たさないと医療費の保障は受けられませんので、この診断が正しいことと、重症度はどのくらいになるかの2つの基準で指定難病の診断が行われる、という風にお覚え下さい。

 

池田:この重症度の基準というのは、それを判断する先生が、専門の先生がいらっしゃると?

 

大竹:そうですね。厚労省、県が指定します担当の医師が決まっておりまして、その方が判断できることになっています。

 

池田:どれくらいの病気が指定難病になっているのでしょうか?

 

大竹:そうですね。5~6年前までは、56疾患しかなかったのですけれども、その後、厚労省の方針が、より多くの患者さんを指定難病として救済しようという方向に転換しまして、毎年見直しを行っております。年々増えてまいりまして、今年の4月からは331疾患が対象になりました。特に、2020年3月が5年ごとの大幅見直し年に当たり、現在検討中です。

 

池田:難病といいますと、それだけ患者さんの数も少ない、ということですが、その中でも一般の方が聞いてもわかるような、あ、これは難病なんだな、という、何か有名な病気とかはあるのでしょうか?

 

大竹:進行性の筋ジストロフィー症、あるいは、脊椎性の筋萎縮症などですね。そのような神経難病が圧倒的に患者さんの数としては、多いと思います。

 

池田:神経難病は、おおよそ全体の何割くらいでしょうか?

 

大竹:難病の中で、大体4割くらい、という話は聞いております。ついで多いのは、膠原病などの免疫疾患になるのではないかと思っております。

 

池田:原因がわからない、あるいは、治療法が確立されていない、となると、治療に長い期間を要したり、高額な治療費がかかったりと、患者さんの負担も大きくなりますよね?

 

大竹:そうですね。

 

池田:それに対しての、何か、国の制度などはあるのでしょうか?

 

大竹:指定難病では、“軽症者特例”と言うものがあり、重症度を満たさずとも支払い医療費が一定限度を超えれば保証される制度があります。指定難病の制度は、0歳から成人まで全員が指定を受けることができます。特に、20歳まではより給付を厚くするという意味を含め、小児慢性特定疾病制度というのが設けられております。これは今のところ881疾患が該当します。ところが、20歳をすぎた場合に、対象疾患が881疾患から331疾患に減ってしまいます。このギャップが今、一番大きな問題となっております。さらに、その小児慢性特定疾病の対象疾病であっても、ある程度の治療費の支払いが必要になります。そこを救うために、各自治体による「乳幼児医療費助成制度」というものがございます。一般的に15歳までは、ほとんどの自治体で医療費が無料、と伺っております。さらに、成人の方を対象に各健康保険組合が「高額療養費保障制度」というものを設けておりますので、そういうのも、皆様、利用されるとよろしいと思います。

 

池田:では、医療費の助成制度を利用するには、まず最初に、どのような手続きが必要になるのでしょうか?

 

大竹:窓口は地域の保健所になります。小児慢性疾病にしろ、指定難病にしろ、まずは保健所に行きまして、医者から聞いてきた病名にあたる申請書をもらいます。大体一人あたり8~10枚くらいの分量の書類だと思います。その書類の中に、医師が記入する書類がございます。例えば、指定難病であれば「臨床調査個人票」が医師の記入する書類でございます。それを主治医に記入してもらい、ご自分の記入された他の書類と一緒に、保健所を介して自治体に提出します。自治体の審査を通りますと、受給券が発行されます。そうなれば、指定限度額以上の医療費は、支払いをしなくてもよろしい、という結果になります。“高額療養費保証制度”の詳細は保険組合に、“乳幼児医療費助成制度“の詳細は各自治体にご確認ください。

 

池田:臨床調査個人票は、どんな先生が書いても大丈夫なのでしょうか?

 

大竹:臨床調査個人票は、自治体の指定を受けた指定難病医しか記入することはできません。したがって、難病を担当できるような病院をあらかじめ自治体に確認してから、行かれることをお勧めいたします。なお、埼玉医科大学には170名ほど、指定難病医がおります。

 

池田:指定難病で、神経性の疾患が多いわけですよね?そういった専門をされている先生が多い、ということでしょうか?

 

大竹:そうですね。

 

池田:大竹先生がお勤めの埼玉医科大学難病センターの取り組みについて、伺いたいと思います。どのような難病でも受けいれてもらえるのでしょうか?

 

大竹:はい。埼玉医科大学病院には、さきほど申し上げましたが、200名近くにおよぶ指定難病の登録医がおります。それに加えて、看護師、ソーシャルワーカー、常勤の遺伝カウンセラー、など多職種の難病を専門とするメディカルスタッフを配置しております。常勤の遺伝カウンセラーまでいる病院は、かなり少ないのが現状でございます。加えて、ゲノム医学研究センターを中心とする基礎系研究社なども協力して、病院全体でできるだけ多くの難病の診療に対応する体制を整えております。臨床、基礎、すべての力を合わせて、難病の患者さんに対応できるように、3年前に、埼玉医科大学病院に難病センターがオープンいたしました。難病センターは「難病相談」、「遺伝相談(遺伝子診療および遺伝病に関する相談)」そして「患者申出療養相談」の3部門に分かれており、医師主導治験や難病研究まで幅広く対応できるように設計されております。なお、患者申出療法とは、保険が通る通らないにかかわらず、患者さん自身が希望される最先端の治療のことです。もう1回いいますと、「難病」、「遺伝病」それから「患者申出療法」について、医師、看護師さらには事務職員にいたるまで、それらに詳しい者を配置し、すべての病気に対応できるように設計されております。

 

池田:埼玉医大の難病センターで診てもらうためには、どのような手続きが必要でしょうか?

 

大竹:電話一本で構いません。「埼玉医科大学 難病センター」で、ホームページを検索していただければ、すぐに電話番号「049-276-1741」に辿り着けます。電話を一本いただければ、初診の方もゆっくりとお話ができるように、予約がとれるシステムになっております。

 

池田:埼玉医大で診てもらいたいけれど、遠くて通えない、という方には、どのような方法があるでしょうか?

 

大竹:その辺りが、なかなか難しくはあります。一つは、埼玉医科大学には、私が勤めております入間郡の毛呂山町の大学病院本院の他に、日高市に国際医療センター、それから川越市に総合医療センターがございます。少なくとも、この3病院のネットワーク、難病のネットワークは私、それからセンター長のリュウマチ膠原病内科の三村(みむら)先生を中心に、すべての患者さんに対応できるようにしております。あと、私自身の話で恐縮ですが、東京都立の小児総合医療センターで遺伝病の相談に、非常勤医師として対応しております。少なくとも、関東地方の病院のネットワークは私や三村医師は持っておりますので、遠方の方であっても、とにかく気軽に電話をいただいて、「埼玉医大は遠いのだけれども」というご相談からお伺いいたします。

 

池田:今週は難病や指定難病についてお話を伺いました。来週は新生児マススクリーニングについて伺います。大竹先生、今日はどうもありがとうございました。

 

大竹:ありがとうございました。

 

以上

 

全文PDFは以下からダウンロードできます。
大竹先生ラジオ聴取報告_1回目